院長のご挨拶

さざ波てんかんクリニックに改称して2年以上経過しました。御家族の同伴や車椅子での来院、子供連れの患者さんに、手狭な待合室やトイレなど不自由を感じられた方も多かったと思いますが、広いクリニックに移転することとなりました。最近では、薬を飲んでいる患者さんの運転が問題視されることもあり、JRを含む最寄の公共交通機関に近い場所としました。今後も心地良く使っていただけるクリニックを目指す所存です。

さて、私は静岡てんかん・神経医療センターや北海道大学病院精神科など、30年近く精神科医の立場からてんかん診療に携わってきました。本年4月末でてんかんセンターの外来業務を終えることになりましたが、今後もてんかんセンターと協力を保ちつつてんかんの専門外来診療を続けていきます。

てんかん診療の世界では単剤治療(一つの薬で治療すること)が基本です。数多くの薬を組み合わせることは、効果の点から意味がないことと副作用の点で有害だからです。しかし、これはある程度他の病気にも通じることではないでしょうか。薬の作用には必ず表と裏があり、残念ながら副作用のない薬はないと考えます。現在、薬を用いずに心理療法やカウンセリングだけで治療できる心の病はごく一部に過ぎませんが、薬剤治療の限界を心得るべきであると考えます。当院ではあくまで薬剤は最小限に留め、十分な効果をもたらすよう心がけます。

治療のゴールは必ずしも症状の消失であるとは考えません。過去の事実にとらわれ続けている場合など、直接解決できないこともありますし、症状の原因を見出せないことも多いものです。症状を軽減させることと同時に、本来あるべき生活に戻ることを目標に、社会復帰を手助けするのが精神科医の役割であると考えます。貧困問題や雇用不安など、私たちを取り巻く世界は健康な人にとっても厳しい状況ですが、当院の治療が精神的リハビリテーションのきっかけになればと願っています。

平成26年5月1日
さざ波てんかん神経クリニック
院長 中村 文裕